吉村芳生展・殿敷侃展
今日は県央部に出張。受付が10時からだったので、行きたかった美術展に朝イチで行って来ました。
「とがった鉛筆で日々をうつしつづける私・吉村芳生展」
県在住の作家、吉村芳生さんの個展です。鉛筆による細密画で有名な方です。地方から発信し続ける、そして芸術と向き合うとはどういうことかを考えさせる展覧会でした。
作品は前から何度も見ているからある程度知っているのですが、自画像を描いた連作を見たことがなかったので、楽しみに行きました。
おそらくこれは県美のオリジナル企画。だったにも関わらず、いやだからかもしれませんが、入り口からいろいろと工夫が凝らされていて、力の入り方を感じました。
代表作・コスモスのアップを会場入り口に。いいセンスだなあ。
(この日の後のこともあり)長くなったので折りたたみます。
入ったすぐのところに、今回の美術展のための新作「ナノハナ」が。ものすごく大きい作品で圧巻。そして右側にフェンスの作品(初期の代表作)が続きます。
大きく分けて「自画像」「新聞」「花」という3つのシリーズに分かれる今回の作品展。行ってみて思ったのが、細密画の人というよりも、むしろ「連続・継続の作家」というべきか、ということ。
365日の自画像は、日常を切り取ったものだと思いますし、日々の断片である「新聞」を切り取った作品にしてもそうです。恐るべき執念で、日々を写し続ける・・・その姿勢こそが作家の表現活動なのだと思いました。すごいなあ。これはもうちょっとじっくり見たかったです。この後の出張の関係で、50分くらいしか美術館にはいられませんでしたから。制作の様子を紹介したビデオの上映もあったので、そちらもすごく興味深く見ました(15分くらい)。グリッドで写真を拡大・写していく手法は決して新しいものではありませんが、それを色鉛筆で行ったということ、継続して描き続けていること。「描かないと私ではない」という作家の言葉に、この方の意志の強さと業みたいなものを感じました。10年に渡って描けない時期があったというのも初めて知りました。そこから徳地に住んでの「花」の世界になるのですが、その10年があってからこののあの花の表現なんだろうなあ。あれだけのことをやるには、ただの思いつきではなく、何かそこに精神的なバックボーンがあるはずなので、それをかいま見れたような気がしました。
もう一つ強く感じたのは、この方は「県美展」で世に知られる画家になったということ。そしてそれを受け入れる県民の芸術文化に対する意識が確実にあるということ。平日の朝というのに、結構人が入っていましたし、みなさん真剣に見入っておられました。これは大変嬉しいことです。そしてこれは美術館が進めようとしていた方向性が、実った一つの結果だと思うのです。ここのところの県美展の入賞作品の傾向は、やはり吉村さんから影響を受けていることが多いと思います。この一つの潮流が、地方発の芸術として、どれだけ中央に発信できるのか。県の美術館・文化行政のこれからの姿勢にかかっていると感じています。第2第3の吉村芳生が出てくるかどうか、楽しみにしていきたいと思います。自分ができることが、ちょっとでもあるといいなあ。
図録が欲しかったけど、これはなかったようでした。作ったらよかったのに~(たぶん予算の関係だろうなあ。こういうところがオリジナル企画のつらいところかしら)
その代わり、絵はがきがありましたので5種購入。やはりこの人の色鉛筆画は、「コスモス」が圧巻!あの風にそよぐ軽々とした明るさが、色鉛筆という媒体と合っていると思います。
第4期のコレクション展で「殿敷侃」の小企画展があったのですが、こちらもものすごくよかった!
この方の仕事の軌跡を是非一度見てみたいと思っているのですが、今回その一端を見ることができたのは大変にラッキーでした。下美も何点かもっていて、版画作品は少しは見たことあるんですが、初期の油彩画を見ることができて嬉しかったです。
お父様とお母様の戒名がタイトルについた「シャツ」と「襦袢」を描いた作品は、ものすごい悲しみがこちらに伝わってきて、何というか胸が締め付けられるような感覚を覚えました(ああ、安っぽい言語表現しかできない自分の表現力のなさが悲しい)。この方の全貌を紹介している企画展ってあったのかしら。・・・と思って調べたら、何回か小規模なものを県美が企画展をしているみたいですね。
こことかここが詳しいので貼っておきます。
恥ずかしながら、タイヤの作品は記憶にあったのに、この方の「ヒロシマ」のイメージが強くて、結びつきませんでした。下美に画録があるみたいなので(灯台もと暗し・・・)今度見てみたいと思います。
充実した時間を過ごした後、Y大にてこれまた充実した出張でした。しかし、メモリ不足・・・
初めてY大に行ったのですが、道に迷ってぐるぐるした挙げ句、遅刻しそうになったのは秘密の方向で・・・専門職の皆様との忌憚なく話せるのは勉強になりますね。大変だったS田さんの慰労会をしたかったんだけど、学食のコーヒーとシュークリームで乾杯となりました。ごめんね~
帰って祖母のお見舞いに行こうと思っていたのに、プリンターがオシャカになって、あわてて修理に出す。これから一番使う時期だってのに、頑張って復帰してください!!
今日は風が強く、いろいろ大変なところもあったみたい。そういえばY大でも自転車が将棋倒しになってましたね。明日も仕事です・・・
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