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2011/05/14

特別展「五百羅漢」

五百羅漢
「ブッダ」に行けなかったのは、こちらを優先したからです。

法然上人八百年御忌奉賛
 特別展「五百羅漢―増上寺秘蔵の仏画
        幕末の絵師 狩野一信」

 江戸東京博物館

久々に両国まで行くと、そこにはお相撲さんがいっぱい!そうか!技量場所開催中かっ!(何だか得した気分)

増上寺に収められていた狩野一信の五百羅漢図、全100点の一挙公開です。
私が知ったのは、この展覧会の監修をしておられる山下裕二さんが、プッシュしておられたから。この方の解説は好きなので、その山下さんがこれは見なきゃと言っておられるなら、それは見たいと思いまして(感化されやすい性格)

昭和20年の空襲で増上寺の建物はほぼ全焼してしまって、羅漢堂も全部焼けてしまった。でも羅漢図は難を逃れて絵は残った。戦後ずっと絵の存在は忘れられていたのですが、今年は法然上人八百年御忌なので、その記念の年に忘れられていた絵を世に出すということになったそうです。
一信は約10年かかって第96幅まで描いたところで死んでしまうのですが、いや、それでも凄いって!どのくらい凄かったかというと、ええ写楽が霞むくらいでした。っていうかこっちのインパクトが強すぎ!やっぱり直筆画ってすごいなあ。

以下すごかったですの連続。折りたたみます。


「羅漢図は十六羅漢図、十八羅漢図、あるいは単体の羅漢や釈迦とともに描かれたものなどが知られていますが、一信はそういった過去の作例を学習しつつ、1幅に5人ずつ、計500人の五百羅漢を描く空前絶後の100幅を構想しました。それぞれ人の背丈ほどの大きさの画面(高さ約172cm、幅約85cm)いっぱいに、羅漢たちの修行や日常の姿、衆生を救済する様子が、その弟子、供養者とともに、さまざま場面の中に極彩色で描かれています。一信は約10年の歳月を五百羅漢図の制作に費やし、その間、他の作品をほとんど描いていないと推測されますが、残念ながら、96幅まで描き終えた数え年48歳で病没し、残り4幅は妻・妙安(みょうあん)、弟子・一純(かずよし)らが補って完成させ、文久3年(1863)に増上寺に奉納されました。」

↑公式HPより

その誰もしない「五百」をきっちりかっちり描いちゃうのがすごいです。羅漢像ってものすごく「濃い」んですよ!それが一幅に5人ずつ・・・これでもかって密度で描き込まれている訳です。密度は伊藤若沖の動植彩画くらいすごいです。しかもこれ人間のおじいいさんの鬼気迫る顔ばっかだから、最初はへーとか思いながら見ていったのですが、10幅くらい見たところで、かなり疲れてきました。でもまだまだ続くんですよね。

一信のすごいところは、進むにつれてどんどん表現方法を変えているところ!
空気遠近法があるかと思えば、かなり正確な線遠近法も使われていたり、光の表現も「これビームでしょ」ってツッコむくらいバンバンと大げさ!かと思うと西洋絵画を思わせる、強い陰影の作品があったり、絶対見て描いてるなあと思わせる「死」の場面とか、災害の場面とか。リアルであり、インスピレーションの塊でもあります。半分くらい来たところでかなりお腹いっぱいになって、ちょっと休憩。

五百羅漢の他に、成田山新勝寺の今までまったく公開されていない「釈迦文殊普賢四天王十大弟子図」も展示されているんですが、横5メートル縦4メートルくらいの巨大なやつで、これを同じ時期に描いていたのかと、もう驚きを通り越してあきれましたよ~すごい、すごすぎるこの人!

でもって、ラスト4幅も描けなかったのは残念かもしれないけど、おかげで一信のすごさが際だった気がします。だってあからさまに違うもん。何か手を抜いてるでしょって言いたくなるくらいの落差。でもあれだけのテンションで描き続けるのって相当大変だったと思う。そりゃ最後の10幅くらいがソフトな感じするのも仕方ないよなあと思ってしまいました。絶対これで寿命が縮んでると思うよ~それだけ作品に注ぎ込んだんだなあ。

見ているこちらもエネルギーを吸い取られ、出る頃にはくたくたに。もうお土産見るのもつらい感じでした(この画録は買って手元に置いときたくないなあ)

HPで、明治の洋画家の黒田清輝が羅漢堂に来て妙安と話をしたなんていう記録も残っているて、何でも彼がフランスに留学した時にパリのギメ美術館に一信の絵があって、館長に「お前、一信って画家知っているか?」と聞かれて、知らなかったから、日本に帰ってきてからあわてて見に来たそうです。
ギメ美術館は、実は写楽展でもいっぱい出てきてまして、今回の旅の裏テーマは「ギメ」だったのねー!とR子さんと納得したことでした。

うん、これは見ないと損ですよ。お化け屋敷に行くと思って是非!7月3日までです。

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